皆様からのお便り 『インドネシアにおける再エネ導入促進と電力系統安定化』 黒石卓司様
3.11から2年後に出版された『歴史を学べば未来は拓ける』(火力発電技術協会発行)の「発電用ボイラの制御」を担当した黒石卓司さん
は、著書の中で「今後、再生可能エネルギー発電の発電量拡大が予想され、系統周波数安定化のために、既設コンベンショナル火力発電プ
ラントの最低負荷切り下げと負荷変化率の向上が必要」と説いている。
再生可能エネルギー導入拡大時の系統周波数安定化の為のマスタープランの策定がインドネシアでも始まった。「負荷切り下げと変化率向
上が絶対必要」と策定に参画している黒石さんの報告です。 「牧浦記」
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インドネシアにおける再エネ導入促進と電力系統安定化
黒石卓司
けたマスタープランを策定中である。これは METI(エネ庁)から受託し、2025年1月から2026年2月の1年間でまとめるも
の。そして、METI からは日本裨益につながるプランが 求められており、東大金子祥三先生、また、三菱パワーインド
ネシアを通じて、長船、高製にも協力頂き調査を進めている。
7 月現在、全調査対象発電所10か所のうち、石炭火力2か所、ガス火力3か所の現地調査を完了し、発電設備サイド、電力
系統サイド双方で系統安定化に貢献できる提言メニ ュー(新規 GTCC の導入箇所、石炭火力の最低負荷低減、電力系統の
電圧調整技術など)が見えてきた。
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■ インドネシアでは今後 10 年間で発電設備が 70GW 増加する
以下にインドネシアと日本の発電設備容量の比較を示す。インドネシアでは2025年から2034年までの10年間で発
電設備容量を約70GW 増やす計画である。このうち43GW(約 60%)が再エネであり、再エネ導入拡大時代の系統安定
化は目の前の課題になっている。
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■ 再エネ導入拡大時代の先頭を走る九州電力
左図は九州電力における一日の電力需要カーブを示す。
九州電力では原子力(緑色)がベ ース運用で、天候が良い昼間太陽光 (黄色)発電量は増加し、火力(グレ ー)が負荷を絞り調整を行うが、需要を上回った分は揚水発電を利用
し夜間の電力需要に対応している。
これは再エネ導入拡大時代の典型 的なエネルギーバランスで、九州電 力は再エネ導入拡大時代の先頭を走っている。
注記:左図の黄色の斜線部「Pumpping」はこの部分の余剰電力で揚水発電所を動かし、低位の水を高位のダムに揚水するといこと。
■ 再エネ導入拡大時代に求められる火力発電の最低負荷低減と負荷変化率向上
以下の図に示す通り、日本の石炭火力では九州電力、四国電力が再エネ(太陽光、風力)の負荷変動 を吸収すべく最低負荷を 15%まで絞る運用を行っている。これは日本のみが行っているもので、今
後インドネシアを始め ASEAN 諸国に展開していける技術である。また、負荷変化率向上も最低負荷低 減同様、電力系統安定化を図るために重要な技術である。
■ 火力発電が持つ慣性力を強化することで電力系統安定化に貢献できる
下図に示す通り、石炭火力には蒸気タービンと発電機、ガス火力にはガスタービン、 蒸気タービン、発電機といった回転機器を 有している。このような回転機器には慣性力がある。一方、太陽光発電には慣性力はなく、再エネ導入拡大時代には火力発電が持つ慣性力が電力系統安定化に貢献できる重要な技術となる。
以上

